映画コラム

ヒーロー映画の多様性が一気に広がる予感。『エターナルズ』が楽しみな理由【MCU一見さんにも見てほしい】

24日の夜、TLが沸いてるなあと思ったら『エターナルズ』の特報が公開されたからでした。2019年の夏に『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』が公開されてから、実に2年近く新作映画のおあずけを食らっているMCUファンの皆さんはもちろん、今か今かと公開を心待ちにしてることでしょう。

一方で、まだMCUに触れたことのない人にとっては、ちょっと手を出しにくい位置づけの作品というか、「どれ、面白そうな映画じゃないか。ちょっくら前作まで予習してから見に行こうかね」と思ったら、実に25本もの映画作品が目の前に立ちはだかってくるわけですよね。(しかもこれから劇場公開する『ブラック・ウィドウ』や『シャン・チー』を含む)配信はディズニープラスのみだし、こりゃあ新規参入はなかなか難しいですよ。

ただこの『エターナルズ』は、前情報の段階からいろいろと革新的な映画だということが予想されるので、MCUファンでなくとも多様性の描かれ方に興味関心のある人とか、韓国映画ファン、マ・ドンソクファンの人とか、とにかくいろんな人に見てほしい。そんな気持ちで、私が『エターナルズ』を楽しみにしているポイントをまとめたいと思います。

『エターナルズ』はマーベル・シネマティック・ユニバース26作品目

あんまり知らない人にも説明したいと思うので、まずはMCUとはなんぞや?について簡単に書きます。こんなことをいきなり書くと、見る気をなくす人もいるかもしれませんが、『エターナルズ』は2008年に始まった「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」という映画作品群の26作品目です。

基本的には1本1本独立した作品として楽しめるようになっているのですが、26作品すべて「同じ世界線で起きた物語」が描かれており、別々の作品に登場していたキャラクター同士がクロスオーバーしたり、時には次の作品へと物語のバトンが渡されたりします。(説明できてますかね?)

最近では、映画だけでなくドラマ作品にもユニバースが広がり、ますます新規参入しづらいジャンルになってきています。参入してしまえばめちゃくちゃ楽しいのですが……!※これまでの作品一覧はWikipedia「マーベル・シネマティック・ユニバース」参照

で、今回の『エターナルズ』なんですが、これまでの25作品予習しなければ話がわからないかというと、きっと全然そんなことはないです。もちろん細部で「〇〇って誰?」「なんかあったっぽいけど何があった?」とか少し引っかかることはあるかもしれませんが、大筋を追うのはきっと問題ないと思います。

実際私もはじめて見たのは『アベンジャーズ』(2011年)からだったし、これまでのMCUの作品で「過去作見ておかないと楽しめない」という作品はほとんどないです。明確に『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』の続編である『アベンジャーズ:エンドゲーム』くらい。もちろん、性格的に「絶対にシリーズは公開順で見たい!」という人もいると思いますが、気にならない人は全く予習ナシで突撃しちゃっていいと思います。特に、今回の『エターナルズ』は新しいヒーローが初めて登場する映画なので、予習なしで見てもまったく問題なく楽しめるんじゃないかな。

では、改めて『エターナルズ』を楽しみにしているポイントを3つ説明していきます。

①キャストの人種的多様性

最初こそアイアンマン、キャプテン・アメリカ、マイティ・ソー……と白人男性ヒーローばかり登場させていたMCUですが、近年では人種的多様性にかなり力を入れ始めているように思えます。

まず転機となったのはやっぱり『ブラックパンサー』でしょうか。監督、キャスト、制作陣の大半がアフリカ系で構成されていたという『ブラックパンサー』は、これまで主人公の良き相棒役(『アイアンマン』シリーズのローディ、『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』のサム、『マイティ・ソー』シリーズのヘイムダルなど)ばかりだったアフリカ系の新ヒーローを誕生させた革新的な作品でした。

また、今後公開が予定されている作品を見ても、現在のMCUがヒーローの人種的多様性を重視していることがわかります。たとえば2021年9月公開予定の『シャン・チー』の主演は中国系カナダ人のシム・リウ。2021年後半に公開予定のドラマ『ミズ・マーベル』では、パキスタン系アメリカ人のイマン・ヴェラーニがイスラム教徒の女性ヒーローを演じるようです。

ちなみに『エターナルズ』は、一人のヒーローを主人公に据えた他の作品とは違い、スーパーパワーを持った不死の宇宙種族「エターナルズ」の物語です。すでに発表されている、エターナルズを演じるキャストの顔ぶれを見ると、アメコミ映画どころかハリウッド映画ではなかなかありえないような人種のバランスに、驚きつつも嬉しくなります。

上の写真には姿がありませんが、特報を見る限り中国系イギリス人であるジェンマ・チャンは、かなり主要な役どころを演じていそう。他にも、韓国映画好きにはお馴染みのマ・ドンソクや、ボリウッドスターとしてダンスするシーンもあるというクメイル・ナンジアニなど、その人一人出ているだけでも嬉しくなってしまうような、多様で新しい顔ぶれが勢ぞろい。さらに、アカデミー賞受賞で注目されている監督のクロエ・ジャオは、MCU史上初のアジア系女性監督です。

このような、キャスト・制作陣の人種的多様性を見るだけでも、『エターナルズ』が今までのアメコミ映画の規格から外れた、革新的な作品であることが予想できるかと思います。2020年代は、「アメコミ映画=マッチョな白人男性が活躍する映画」という強固なイメージを払拭する時代になるのかも。そして『エターナルズ』はその先駆けとなるのかもしれません。(すでに2021年春に公開されたドラマ『ファルコン&ウィンターソルジャー』でも、その片鱗は見えています)

②MCU史上2人目のクィアなヒーローが登場

MCUヒーローの人種的多様性については、『ブラックパンサー』をはじめとする2010年代の作品から、少しずつ変化が続いています。一方、これまでのMCU作品の中で、セクシャルマイノリティであることが明言されているスーパーヒーローは、たった一人しかいません。

その一人とは、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年)に登場したヴァルキリーのことです。ただし、ヴァルキリーは原作コミックではバイセクシャルとして描かれているのですが、映画では示唆される程度で、はっきりそうとわかるシーンはありません。演じたテッサ・トンプソンが自身のTwitterで「彼女はバイセクシャル」と明言したことにより、今では公式設定として浸透しています。

2022年に公開される『マイティ・ソー ラブ&サンダー』では、ヴァルキリーのセクシャリティも掘り下げて描かれるそうですが、現状MCU作品においてセクシャルマイノリティのヒーローがほとんど描かれていないことは間違いありません。

それを踏まえて『エターナルズ』の楽しみなポイントに話を戻します。ブライアン・タイラー・ヘンリ―演じるキャラクター・ファストスには、ハーズ・スレイマン演じる同性のパートナーがいるということが明らかになっています。劇中には二人のキスシーンもあるそうで、いずれもMCU史上初めてのことです。正直、これだけ長く続いていて今さら「初」かよ?という気持ちもあるのですが……。

記事からハーズ・スレイマンのコメントを引用します。

「これは僕の初めてのマーベル映画だからね、もちろん楽しみだよ。誇りに思われるものになると感じてる。マーベルがこれまでに成し遂げてきたことを思うと、僕はすごく誇らしい気持ちになるね。制作陣は、大きな思いやりを持ってこの件と向き合ってくれて、ファストスは映画のなかでも重要な1人だ。僕は彼の夫で、建築家。僕たちには1人の子供がいる。僕がスーパーヒーローだったら良いのにとは思うけどね。アラブ系のムスリムでゲイをオープンにしている俳優がスーパーヒーローを演じられたらさ?それが待ちきれないな」(引用:https://front-row.jp/_ct/17428146)

ハーズ・スレイマンが演じたキャラクターは「エターナルズ」ではないようですが、多くの人にとって重要なキャラクターになるのではないかと思います。私も彼がスーパーパワーを手にして闘う日を心待ちにしたいです。これまで、ヒーローのパートナーである女性がスーパーヒーローになった前例はたくさんあるので、もちろん可能性は大いにありますよね。

MCU史上2人目となるセクシャルマイノリティであることが明言されたヒーロー、ファストスがどんなキャラクターなのか、彼らのどんな生活や心の動きが描かれるのかに注目して、『エターナルズ』を楽しみたいと思います。

③ろう者のスーパーヒーローも登場

キャストの一人、ローレン・リドロフは『ウォーキング・デッド』『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』などに出演している俳優です。彼女は生まれつき耳が聞こえないため、他者との対話は手話を使って行います。前述の作品を見て彼女のことを知っていたので、名前を見つけたときは、ろう者がスーパーヒーローとして闘う姿が見られることを、とても嬉しく思いました。

ローレン・リドロフのコメントも引用します。

「ずっと観ていたMCUにいきなり加わることになったので驚きました。だけど、圧倒されるよりも興奮しています。ろう者の一人としてコミュニティを代表できること、MCUにそういうストーリーを取り入れられること。この種の物語を描く余地はたくさんあると思います。」(引用:https://theriver.jp/eternals-reshooting/)

ちなみに、MCUスピンオフドラマ『デアデビル』の主人公・マットは、幼い頃の事故が原因で視力を失ったものの、厳しい鍛錬と研ぎ澄まされた感覚で、誰にも負けない体術を手に入れたスーパーヒーローでした。ただし、演じるチャーリー・コックスには視覚障害はありません。

ローレンの言うようにMCUに聴覚障害のある当事者が参加すること、そして当事者が演じたキャラクターのストーリーがMCUの一部となることが重要だと思います。ローレンが演じるマッカリは一体どんなパワーを持っているどんな性格のキャラクターなのか。これも『エターナルズ』を楽しみにする理由の1つです。

『エターナルズ』公開は11月5日、先は長い!

というわけで、『エターナルズ』の注目ポイントをいくつかご紹介してきました。冒頭で説明した通り、これまでのMCU作品を見ていなくても、楽しめる作品になっているんじゃないかと予想します。多様なスーパーヒーローに興味のある人は、誰でも気軽に映画館に足を運んでほしいです。

とはいえ、『エターナルズ』の日本公開は全米と同じく11月5日。あと5か月以上も猶予があります。もし時間と気力に余裕がありそうな人は、過去のMCU作品を予習するのも良いと思いますよ!
どうやら「エターナルズ」という宇宙種族は、『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ:エンドゲーム』で、アベンジャーズと対峙した「サノス」と関係がある……なんて話も漏れ聞こえてきますし、とりあえずこの2作だけ見ておくのもいいかもしれません。

5か月の間に少しずつ、新情報も明らかになっていくと思います。今後も目が離せないですね。